会長コラム ~Trivia Tweet~

コシヒカリの憂鬱

[2021.10.04]

今年の秋は台風の影響もなく秋晴れが続いていて、稲刈りも終わりに近づいています。


ただ、この時期としては気温の高い日もあったりして、気温差が大きくなりますので体調を崩さないようご注意ください。


今年はお盆前から気温が平年並みで雨の日が多かったことから、10月1日現在のコシヒカリの1等米比率は85.7%で、昨年の43.1%より大幅な改善となっていますし、食味も良好ですよ。
収穫量は「少ない」との声が多く聞かれます。


さて、今年のコシヒカリは倒れている田んぼが珍しいくらい稲が立っていましたね。
昨年、一昨年とは大きな違いです。


田園風景を見慣れない方にとっては「きれいな田んぼだな~」「きれいな田んぼからは、きっとおいしいお米がとれるね。」と思われることでしょうね。


下条 慶地(けいじ)の棚田
keijitanada2.jpeg


一方、作る側から見ると、「肥料不足で収穫量が心配」と言うことになりますね。


慶地の棚田 稲刈り風景
keijitanada1.jpeg


前にも話したのですが、コシヒカリは草丈が長い品種で、倒れやすいため肥培管理(肥料や水の管理)が難しく手間がかかる栽培技術を必要とする品種なのです。

一般的な栽培を例にすると、稲穂が出る一月前に肥料を効かせないこと、具体的には田んぼを乾かす中干しを行い生育を抑えることが重要となります。


何処まで肥料を効かせないかは葉の色で判断することになりますが、人によって、天気によって見え方が変わるため、色味標本や葉色計(緑の濃さを測る機械)で判断します。
このままでは栄養失調になってしまいますので、穂の出る18日前と10日前に追肥(このときの追肥を穂肥(ほごえ)と言います)し、倒れづらく一定の収穫量を確保します。


「倒れづらく」と言うのは、収穫量は


 面積あたり(㎡)の株数 × 一株の穂数 × 一穂籾数 × 登熟(実り)歩合 × 千粒重 で求められます。


*株数は、田植えの時に決まります。
*一株の穂数は茎の数で決まりますが、中干しをすることで不要な茎を増やさないようにしています。
*一穂籾数は肥料によって決まりますが、稲穂は穂の出る一月前から成長し始め、肥料分が多いと籾の数が増えます。
*穂の出る一月前は、草丈が(実際には下位の節が伸びる)伸びる時期と重なるため、両方のバランスを取って追肥の時期と量を設定しています。
*登熟歩合と千粒重は、籾数と相関関係があり、籾数が多すぎると実りが悪い籾が多くなるため登熟歩合が下がりますし、千粒重にも影響します。


この相関関係から、コシヒカリは草丈が長い品種なので、肥料が少ないと倒れることは少ないが収穫量も減ることになり、肥料が多いと草丈が伸び倒れることになりますね。


私が常々目指しているのは、「胴なびき」(地際から倒れるのではなく、稲穂の重さで自然に腰をかがめるように見えること。)ですが、皆さんはいかがでしょうか。

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